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ヤコブの手紙の修辞構造

各ペリコーペの集中構造(コンチェントリック)と交差配列(キアスムス)と並行法(パラレル)

[1]挨拶  (James 1:1-18)
 
P(1:1)神と主イエス・キリストの僕であるヤコブが、離散している十二部族の人たちに挨拶いたします(1:1)
  A(1:2-4)  兄弟への呼びかけ
    B1(1:5-8)    知恵の欠けている人(1:5)
    B2(1:9-11)    貧しい兄弟(1:9)
    B3(1:12-15)    試練を耐え忍ぶ人(1:12)
  A'(1:16-18)  兄弟への呼びかけ
 
   A:兄弟への呼びかけ B:さまざまな人への勧め

[2]神の言葉を聞いて実践する  (James 1:19-27)
 
  A(1:19-20)  聞くのに早く、話すのに遅く(1:19)
    B(1:21-22)    御言葉を行う人になりなさい(1:22)
      C(1:23-24)      御言葉を聞くだけで行わない者(1:23)
    B'(1:25)    その行いによって幸せになります(1:25)
  A'(1:26-27)  舌を制する(1:26)
 
   A:言葉の制御 B:行う C:行わない

[3]人を分け隔てしてはならない  (James 2:1-13)
 
  A(2:1)  人を分け隔てしてはなりません(2:1)   (ποσωπολημψίαις)
    B(2:2-4)    差別をし、誤った考えに基づいて判断を下したことになる(2:4)   (κροταὶ)
      C(2:5-7)      富んでいる者たちこそ、あなたがたをひどい目に遭わせ、裁判所へ引っ張って行くではありませんか。(2:6)
  A'(2:8-10)  人を分け隔てするなら、あなたがたは罪を犯す(2:9)   (προσωπολημπτεῖτε)
    B'(2:11-12)    律法によっていずれは裁かれる者(2:12)   (κρίνεσθαι)
      C'(2:13)      人に憐れみをかけない者には、憐れみのない裁きが下されます(2:13)
 
   A:分け隔てをするな B:裁き C:憐れみ無き者

[4]行いを欠く信仰は死んだもの  (James 2:14-26)
 
  A(2:14)  自分は信仰を持っていると言う者がいても、行いが伴わなければ、何の役に立つでしょうか(2:14)
    B(2:15-16)    体に必要なものを何一つ与えないなら、何の役に立つでしょう(2:16)
      C(2:17)      行いが伴わないなら、信仰はそれだけでは死んだものです(2:17)
        D(2:18)        「あなたには信仰があり、わたしには行いがある」と言う人がいるかもしれません(2:18)
          E(2:19)          あなたは「神は唯一だ」と信じている。結構なことだ。悪霊どももそう信じて、おののいています。(2:19)
        D'(2:20-23)        愚かな者よ、行いの伴わない信仰が役に立たない、ということを知りたいのか(2:20)
      C'(2:24)      人は行いによって義とされるのであって、信仰だけによるのではありません(2:24)
    B'(2:25)    行いによって、義とされたではありませんか(2:25)
  A'(2:26)  行いを伴わない信仰は死んだものです(2:26)
 
   A:行いを伴わない信仰 B:行いの必要性 C:行いと信仰 D:行いを伴わない信仰 E:悪霊の信仰

[5]舌を制御する  (James 3:1-12)
 
  A(3:1-2)  言葉で過ちを犯さないなら、それは自分の全身を制御できる完全な人です(3:2)   (δυνατὸς)
    B(3:3-4)    馬を御するには、口にくつわをはめれば、その体全体を意のままに動かすことができます(3:3)
      C(3:5-6)      舌は「不義の世界」です(3:6)
    B'(3:7)    あらゆる種類の獣や鳥、また這うものや海の生き物は、人間によって制御されていますし、これまでも制御されてきました(3:7)
  A'(3:8-12)  舌を制御できる人は一人もいません(3:8)   (δύναται)
 
   A:制御できる人 B:動物 C:舌は悪

[6]上からの知恵  (James 3:13-18)
 
  A(3:13)  あなたがたの中で、知恵があり分別があるのはだれか(3:13)   (σοφίας)
    B(3:14)    内心ねたみ深く利己的である(3:14)   (ζῆλον)
      C(3:15)      そのような知恵は、上から出たものではなく、地上のもの、この世のもの、悪魔から出たもの(3:15)
    B'(3:16)    ねたみや利己心のあるところ(3:16)   (ζῆλος)
  A'(3:17-18)  上から出た知恵は、何よりもまず、純真で、更に、温和で、優しく、従順なものです(3:17)   (σοφία)
 
   A:知恵 B:ねたみ C:悪魔の知恵

[7]神に服従しなさい  (James 4:1-12)
 
  A(4:1-3)  何が原因で、あなたがたの間に戦いや争いが起こるのですか(4:1)
    B(4:4-6)    神に背いた者たち、世の友となることが、神の敵となることだとは知らないのか(4:4)
    B'(4:7-10)    神に服従し、悪魔に反抗しなさい(4:7)
  A'(4:11-12)  兄弟たち、悪口を言い合ってはなりません(4:11)
 
   A:争い B:神に敵対する、悪魔に敵対する

[8]誇り高ぶるな  (James 4:13-5:6)
 
  A(4:13-14)   あなたがたには自分の命がどうなるか、明日のことは分からないのです(4:14)
    B(4:15-17)    人がなすべき善を知りながら、それを行わないのは、その人にとって罪です(4:17)
  A'(5:1-3)  自分にふりかかってくる不幸を思って、泣きわめきなさい(5:1)
    B'(5:4-6)    畑を刈り入れた労働者にあなたがたが支払わなかった賃金が、叫び声をあげています(5:4)
 
   A:運命 B:罪

[9]忍耐と祈り  (James 5:7-20)
 
  A(5:7-8)  忍耐しなさい(5:7)
    B(5:9)    裁きを受けないようにするために(5:9)
      C(5:10-11)      主の名によって語った預言者たちを、辛抱と忍耐の模範としなさい(5:10)
        D(5:12)        裁きを受けないようにするために(5:12)
  A'(5:13-14)  あなたがたの中で苦しんでいる人は、祈りなさい。(5:13)
    B'(5:15-16)    その人が罪を犯したのであれば、主が赦してくださいます(5:15)
      C'(5:17-18)      エリヤは、わたしたちと同じような人間でしたが、雨が降らないようにと熱心に祈ったところ、三年半にわたって地上に雨が降りませんでした(5:17)
        D'(5:19-20)        罪人を迷いの道から連れ戻す(5:20)
 
   A:忍耐 B:裁きと赦し C:預言者 D:裁きを逃れる


聖書の引用は「新共同訳聖書」より