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研究テーマ

人文学の科学に向けて

    研究の将来的なゴールは、科学的な反証可能性を担保した人文学研究の方法論の確立、です。もう少し具体的に言うと、複雑で抽象的な概念や繊細な感性など人文学を理解する上で欠かすことができないが現状では科学的に扱うことの困難な要素を、言葉とその意味解釈のプロセスを計量的に明示化することで科学的に扱えるようにすることを目標としています。
    人文学の研究は、我々人間という存在を理解する上で非常に重要な営みの一つではありますが、扱う対象の特性上、実験や数値的な分析にはあまりなじみません。そのため、客観的な結論を出したり、公正な評価をすることがなかなか難しいという問題があります。しかしながら、人文学や人文学が扱っている対象は、人と人の間でコミュニケーションを通じて行われる営みである以上、「言葉」や何らかの「記号」という科学的に操作可能なものを媒介として成り立つ場合が大部分です。そこで「言葉」や意思伝達に用いられる「記号」に焦点を当てることで、人文学の客観性を高めることができるのではないか、という発想が出発点にあります。
    このような、人文学に科学的な方法論を導入しようと試行錯誤する研究領域は近年デジタル・ヒューマニティーズという名前で呼ばれるようになってきました。日本でも数年前に学会が設立されたばかりの新しい分野ではありますが、情報技術の急速な進歩に伴って、伝統的な学問の在り方自体を変えようとする大きな流れになりつつあります。
    人文学と科学の関係については編書『量から質に迫る: 人間の複雑な感性をいかに「計る」か』でもう少し詳しく扱っておりますので、興味をもたれた方はご参照いただけますと幸いです。

対象領域

聖書

    二千年以上にわたって蓄積されてきた聖書学でのテキストの正確な意味解釈を行うための方法論は多岐に亘り、また非常にハイレベルです。聖書学の方法論をアルゴリズム化できれば、聖書自体の理解を深めると同時に、他にも応用可能な高度で深いテキスト解釈のメカニズムを科学的に実現できる可能性があります。
    ただ、一度にすべてを科学化することは非常に困難性が高いため、個々の解釈技法を取り上げて順にデータとアルゴリズムで記述するというアプローチをとってきています。これまでには、引用分析(2006)、異本分析(2007)、文学構造分析(20082015)、翻訳分析(20102013)などを行ってきています。


文学

    文学作品の物語構造(201120122014)や文体的な特徴(2011)、文芸批評や書評における作品解釈の視点などの問題を計量的に扱う手法の研究を行ってきています。また人工知能にショートショート作品を作成させるプロジェクトのメンバーとして人工知能による応用を視野に入れた物語研究も行っています。


映画・演劇等

    総合的な芸術である映画や演劇に関してどのような視点で作品を鑑賞するのか、どのような前提知識が有用かなどの分析を批評文に基づいて行っています(2012a2012b)。

Web・Twitter

    WebやTwitterのデータを収集し、計量的なテキスト分析の手法を用いて東日本大震災(2013)や政治活動(2008)のような社会的な事象における人々の概念構造の抽出を行う研究を行っています。

アーカイブズ

    様々な種類のデータを蓄積して構築されるアーカイブズから知識構造を抽出する方法論の研究を行っています。これまでに扱ってきた対象は、文化財保護活動(2014)、学術論文、講演記録集(2014)などです。

音楽

    音楽について語るテキストに基づく音楽的な感性の分析と、楽譜に基づく楽曲自体の計量的な特徴抽出の分析を行っています。